器:杉江保枝

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DATE:
2005.03.11

『せりの白和え』

●作るのが面倒だと敬遠されがちな白和えですが、手順を覚えてしまえば肉じゃがなどと同様、いやそれ以上に、男心を掴むにはもってこいの料理ではないかと密かに思っています。材料を一つ一つ個別に調理した上で和えるわけですから確かに面倒ですが、複雑な味わいが一体となって舌の上に広がる快感を思えば、手間も何のその。濃厚なのに淡泊で、適度な塩気に甘さが加わり、おかずとしてもおつまみとしても、上級の料理と言ったところでしょうか。今回は春らしくせりを使用。三つ葉や菜の花で代用しても美味しく出来上がりますし、材料はお好みで色々試してみるのも一興かと存じます。ゴマに豆腐に野菜にこんにゃくと、材料は健康に良いものばかり。ぜひ一度お試しください。
用意するもの(概略)
  • こんにゃく1枚
  • にんじん1/3本
  • 干し椎茸5枚
  • せり1把
  • だし汁、みりん、砂糖、醤油、塩、各適宜

和え衣

  • 絹ごし豆腐1/2丁
  • ゴマ大さじ2
  • 砂糖大さじ1/2
  • みりん大さじ1/2
  • 塩小さじ1/2

一口メモ

●レシピを書いていても確かに面倒だな〜という印象が。でも慣れてしまえばどうってことはありません。材料を個別に調理すると言っても、煮汁はひたひたですし、比較的早く火が通ります。ある程度火が通ったら、あとは火から下ろして冷ましますが、味が本当にしみるのは、この冷ましている時間帯ですので、自然にお任せと言ってもいいかもしれません。味付けは、あまり濃くすると色味が悪くなってしまいますが、豆腐とすりゴマの甘味に負けない程度の味は必要です。近年薄味流行りで、材料の持ち味を生かすとは名ばかりのぼやけた味付けが幅を利かせていますが、食事療法が必要な方ならともかく、やはりきちんと味の付いた美味しい料理を食べたいですよね。出来上がったときの全体の味を想像しながら、味付けしてみてください。料理は想像力、そして記憶力です。初めて食する材料でないのなら、記憶を頼りに想像力を働かせることが出来るはず。ぜひぜひ味に過不足のない美味しい料理を作って食べてください。

作り方
  1. こんにゃくは短冊に切り、湯がいてあくを抜く。
  2. 小振りの鍋に1のこんにゃくを入れ、ひたひたになる程度にだし汁を加え、砂糖、みりん、醤油で味付けし、煮て冷ましておく。
  3. 干し椎茸は戻して千切りにし、こんにゃくと同様、だし汁、砂糖、みりん、醤油で煮て冷ます。味付けはこんにゃくよりやや濃いめにする。
  4. にんじんは千切りにして小鍋に入れ、だし汁と砂糖、塩で軽く甘煮にして冷ましておく。
  5. せりは振り洗いをして根本の汚れをキレイに取り、根からゆっくりとお湯にくぐらせ、色よく茹でる。ゆであがったら冷水にとって冷まし、水を切って2〜3センチの長さにカット。根も使うので、捨てないこと。
  6. ゴマは良く煎ってすり鉢でする。油が出てくるまで丁寧にする。
  7. 豆腐はキッチンペーパーに包んで、電子レンジで1分半加熱して水を切る。水切りした豆腐を6のゴマに加えて、すり混ぜる。
  8. 豆腐がなめらかになったら、砂糖、みりん、塩を加えてさらに良くすり混ぜる。
  9. こんにゃく、椎茸、にんじんは、さめたら煮汁を切る。キッチンペーパーを敷いたボールやバットに、なるべく汁を入れないように丁寧に材料を移すと良い。
  10. 8の和え衣に煮汁を切ったこんにゃく、椎茸、にんじん、さらにせりを加えて木じゃくしでよく混ぜて出来上がり。器に盛りつけ、軽くゴマをふると見た目がきれいに仕上がる。

※調味料の分量は、お使いの製品によって塩分や甘みに相当違いがありますので、ご家庭でお使いのものに合わせて調節してください。表示してある分量はあくまでも目安です。

一口メモPart2

●材料を個別に調理するのも面倒ですが、すり鉢を使うのが面倒という方も少なくないかもしれません。それ以前に、すり鉢のないご家庭が最近は多いのだとか。そういう方はまず練りゴマを使ってください。瓶入りで市販されていますし、最近は質の良いものがスーパーなどでも簡単に手に入るようになっています。表面に油が浮いている場合はよくかき混ぜてから使用。家庭でゴマを炒りつけてすったものよりかなり濃厚な味ですので、分量は加減してください。豆腐の水切りは電子レンジで簡単に。キッチンペーパーに包んで、豆腐一丁が約3分。今回は半丁ですので1分半の加熱で水切り完了です。この豆腐を練りゴマに混ぜてゆくわけですが、フォークの背などを使ってつぶしながら混ぜればOK。簡単に和え衣が出来上がります。白和えの衣は滑らかなのが良いとされていますが、少しくらい豆腐の原型が残っていた方が、味わい深いという方もいます。あまり気にせずに、練りゴマと豆腐を混ぜるだけ、と思ってお作りになってください。ファーストフードで育った子供たちにはあまり馴染みのない味ですし、複雑な味わいがどれほど現代人に支持されているのか不安すら感じますが、とにかく一度召し上がってみてください。

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